2014年09月16日

慈しみ育むこと その2

慈しみ育むこと その2 01

このカプセル、何だか判りますか?
サザビーのブログの読者様なら「あ・・・例の?」と思われる方も多いでしょう。
そう、トリロスタンです。
今の彼女の全てを支えているといっても過言で無い薬品です。
サザビーはある病気を発症し、その治療過程でこの薬品と出会います。
当時は国内での使用許可が中々下りず、高価な薬品でしたが現在は認可されて
比較的、安価で手に入るようになりました。
1日1回、投与する分量は個々のワンちゃんの症状によって違います。
ただし毎日欠かさず与えなければなりません・・・・・・
それがサザビーとクッシング症候群との闘いだからです。

今回のテーマは「維持」です。
サザビーの健康を保つための必要な治療内容を記載していきます。
もちろん前回も書きましたが、これはあくまでサザビーに対する処置の一例です。
全てのワンちゃんに有効という事ではありません。
くれぐれもご注意ください★☆★


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2度の輸血を済ませた後のサザビーは、1日1回行われる血液検査を受けます。
病院では水分(まあ、コーヒーなんやけど、汗)を摂り始めたことと
食欲(ええと、ケンタなんやけどね、汗)も出てきたことを先生に伝えます。
そして瞳を確認して気力が見え始めたと診断され、血液検査に臨みます・・・・・・
ここでヘマトクリット値が再び下がっていれば、サザビーの将来は暗雲が立ち込めます。
結局、体内の何処かで出血が続き、それが止まらないのか
もしくは止血はしているが骨髄で血液を作らなくなっているのか
この2つの仮説が有力な状態になってしまうからです。
これを読んでいる皆様は、恐らくこう思うでしょう。
血液の濃度が下がっているのなら、その都度輸血を繰り返せば良いと・・・

しかしこれは非現実的な話です。
常に貧血気味の体に輸血を繰り返していけば、確かに多少は生きながらえるでしょう。
けれど次第に体は衰弱していきます。
何故なら体内にある血はあくまでも他のワンちゃんの血であって
クロスマッチで適合するというだけの血液なのです。
本来の血液は外から栄養を摂って骨髄で作られるものなわけで
それを一時凌ぎであろうとされる輸血を永遠に続けるという方法はナンセンスです。
今後もサザビーが体内で自ら血液を作らなくなったのであれば、これはもう人間の白血病に近い状態なのです。

検査の結果、答えが見つからない状態に陥ることを予期していた自分は、この僅かな期間の間
サザビーに好きなモノを与えて出来る限りストレスを無くしてあげようと思っていました。

なるべく笑顔が続くように・・・・・・

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慈しみ育むこと その2 02

こちらは2回目の輸血が済んだ後の、最初の検査結果です。
輸血前は僅か約15%だったヘマトクリット値は輸血後に約20%になり、その後
たった1日のインターバルですが、その数値は約23%に変化していました。
ついにヘマトクリット値の数値が僅かながら上昇したのです。

骨髄が血液を作り始めた?
出血していた箇所が止血したから?
コーヒーを飲んだから?
ケンタッキーを食べたから?
神様に祈ったから?

理由はどうあれ約2週間ほどの血液の減少はようやく止まったのでした。
もちろんぬか喜びは禁物です、僅かな数値は誤差の範囲内ですし
決してこれで完治したわけではないからです。

しかしここからサザビーの体力はどんどん回復していきます。
浴びるほどコーヒーを飲んで、肉を食べ・・・
(途中、再び血便を起こしますが・・・汗)
横たわっていただけの体を起こして歩けるようになり
痩せ細った体重も徐々に上がっていきました。
そして当時、疑われた子宮蓄膿症のための避妊手術も
出来るほどの体力を蓄積していったのです。

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ここで一段落出来た自分達は、ようやくサザビーの呼吸や出血、
体力低下等の根本であろうとされる、ある病名に辿り着きます。
それは【副腎皮質機能亢進症】、一般的にはクッシング症候群と呼ばれる病気です。
簡単に書くと体内(副腎皮質)から分泌されるホルモンの量の変化に伴い、
体の様々な箇所に異変が生じてしまう病気です。
特に高齢の犬に発症しやすく、多飲多尿、脱毛、腹部膨満等の症状が挙げられます。

それでは何故、このクッシングを疑ったのか?
理由は色々あります。先ず第一に血便が起こる前に多飲多尿であったこと。
呼吸困難に気を取られていて見過ごしていましたが、水をがぶ飲みする事と
トイレシートに隙間がなくなるほど、尿を分散させていた時期があったのです。
そして下腹部の膨らみ、これは子宮蓄膿症を疑われた際に気づいたことです。
ただ中々クッシングに到達できなかった最大の理由は、サザビーにはこの病気特有の
「左右の毛の脱毛」という症状が全くなかったからなのです・・・・・・

この当時、サザビーのコートには不思議な現象が起きていました。
それは毛は長いのですが、それが一向に抜け替わらず一年中同じ姿だったのです。
もちろんブラッシングしても抜ける毛はごく僅か・・・
通常なら年間通して、どこかで生え変わるはずなのでこれは異常なことでした。
犬の被毛の喚毛期や成長の周期を決めるのは【雄性ホルモン】の「テストステロン」や「副腎皮脂刺激ホルモン」
【雌性ホルモン】の「卵胞ホルモン」は被毛の成長速度を低下させます。
更に【甲状腺ホルモン】は犬の毛の成長に特に関係が深く、これが不足すると脱毛が進むと言われています。
特に牝は出産、及びその前後のホルモンのバランスが 毛の生え替わりを決定するようなので
必ずしも季節通りに行われにくい傾向があるようです。
この時、彼女は10歳から11歳になる年齢、避妊はしていません。
想像妊娠の期間もあり、乳腺腫瘍もお腹に幾つか分布しており、ひょっとすると
これはホルモンバランスが高齢になるにつれて崩れてきている?という説に辿り着いたのです。

当初、病院の先生はクッシングに関してはイマイチの反応でした。
それは当然のこと、サザビーには前述とおり脱毛が見られなかったからです。
しかし年間、抜け毛のないコートは明らかに異常なはず・・・
原因不明の呼吸困難も、マズルの膨らみから鼻腔の中で何かの炎症が発症しているのかもしれません。
どれもこれもホルモンバランスの崩れから・・・とは言えませんが
先ず疑うべきところは全て疑ってみて、その都度検査をして
違う場合は除外していく消去法を選んだのでした。
副腎から分泌されるコルチゾールの値を測定して検査を行います。
その結果、サザビーはクッシングの兆候があったのです・・・・・・

長かった。
ここに辿り着くまでに約一年半も要したのですから。
そして苦しい時間を共有していたとはいえ、サザビーには申し訳ない気持ちでいっぱいでした。
もう少し早く対処できれば、あんなに毎晩苦しむことがなかったのかもしれません。
呼吸困難の症状からクッシングに辿り着くのは至難の技とはいえ
先入観を持つことなく視野を広げて彼女の症状を見守れていたなら
あるいはもっと早く気づいてあげられたかもしれないのです。
飼い主失格だと痛感した一瞬でもありました・・・・・・

ここからサザビーは前述したトリロスタンを毎日欠かさず服用していくことになります。
当時は高価な薬品でしたが、今は犬用にも作られておりリーズナブルになりました。
もちろん投与する分量は定期的にコルチゾール検査を行った上で、約3ヶ月周期で決めていきます。
効果は副腎から分泌されるホルモンを抑制する働きがあり、多すぎても少なすぎてもいけません。
比較的ケトコナゾールよりも副作用が少ないようなので、安心して服用できます。
もちろんホルモンのバランスを整える薬品なので、検査をして医師の判断の元、服用されることが大前提です。

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サザビーはこの後、飛躍的に回復していきます。
ヘマトクリット値も上昇して、血便をする前の状態よりも値が増加していくのです。
そしてあれほど脱毛の無かった被毛が、いったん全て抜け落ちてしまいます。
本当に毛の短い子犬のような体つきに変化していくのです。
恐らくこれは停止していた毛根の成長サイクルが動き始めたことを意味します。
つまりはトリロスタンによって多量に分泌されているであろう副腎皮質ホルモンの抑制により
体内のホルモンバランスが正常に戻り始めたこということです。
そしてその効果はサザビーにとって絶大であったことは、現状の彼女を見れば一目瞭然です。
ホルモンのバランスを整えたことによる効果と言ってしまえば、それまでですが
体力や気力、そして安定した被毛の維持等、全てにおいて若返りを始めます。
クッシングという病気の治療に使われる特別な薬剤を投与し続けることにより
病気になる以前よりも明らかに健康的になるとは、いささか皮肉でもあるけれど
サザビーの状態において秘密があるとすれば、この薬のおかげなのだろうと思います。

とはいえ、健康な子がこの薬を使用することはできません。
トリロスタンはあくまで体内で多量に分泌されるホルモンを抑制して
バランスを取る薬品ですが、この薬の量が多すぎると逆にバランスを崩してしまい
「慢性副腎皮質機能低下症」(アジソン病)になってしまうのです。
つまり健康な状態で使用をすると別な病気になってしまいます。
ましてやクッシングを発症したとはいえ、トリロスタンで全てが改善しない子もいます。
少なからず副作用もありますし、個々の症状に「合う・合わない」があるわけです。
恐らくサザビーにはトリロスタンが効果的に効き、そして長期に渡る服用にも
体調等の異変をもたらすことなく、日々健康でいられる唯一の薬だったのです。
(定期検査でトリロスタンの分量は、その都度調整しています)

もしトリロスタンに副腎皮質ホルモンの抑制以外に、何か効果的に働く力があるとすれば
それこそが前回の記事に書いた「永続性な生命力」の保持なのかもしれませんね。
クッシングという病に掛かり、ホルモンの分泌量が多量になった体内の中に投与する
トリロスタンの分量が偶発的に今の状態に繋がっているということです。
ただ偶発的とはいっても丸4年ですから、処方自体が彼女にとって効果的なのでしょう。
・・・あくまで勝手な仮説です(汗

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体調が上向きになったことを見極めた上で、サザビーは手術に臨みます。
それは乳腺腫瘍の件と口元のおできの切除、更には子宮蓄膿症に伴う避妊手術です。
特に乳腺腫瘍は数が多かったため、一度お腹の皮膚下にある乳腺を全て取り除き
左右の皮膚を引っ張り、お腹の中心で再度縫い合わせると言う大掛かりな手術でした。
犬の手術は輸血をしながら・・・というわけにはいきません。
つまりここで2時間を越える大きな手術に臨めたと言うことは
それだけ体内の血液が復活していた証拠なのです。
高齢であることも考慮して、万全に万全を重ねた上での手術でしたが
当のサザビーは、たった一日の入院で翌日は街中を闊歩するほどの元気を取り戻していました。
動物の生命力は本当に凄いです、人間なら手術の翌日、元気に歩くなんて出来ませんから(汗

摘出された乳腺腫瘍は病理検査を経て、良性か悪性かを判断します。
一番肥大化していた腫瘍の一つのみ、これが良性から変化した悪性腫瘍でした。
ここから約3年間、再発に気をつけなければなりません・・・
けれど僕達は悪性腫瘍が出てきたことを前向きに捉えていました。
つまりギリギリのタイミングで、きちんと切除できた幸運を今は喜ぶべきだろうと思ったからです。

幸い避妊後の彼女はあらゆることに順調でした。
まるで以前は健康だったとされる過去のどの年代よりも、輝いて見えたのです。
目は輝き、耳の毛と体をまとうコートは若い頃よりも伸び始めました。
足腰も丈夫になり、15歳になる今も、いまだサザビーは芝生の上を走り回ります。
もちろん彼女にも老化はあります、ピークは12歳ぐらいだったかもしれません。
避妊後の抜け落ちたコートが蘇った頃が、全盛期のサザビーだった気がします。
ただ自分の中では、それを「維持」するために日々あらゆる努力を惜しまないようにしています。
ヘマトクリット値の上昇による血液濃度の安定も
トリロスタンによる薬物投与のホルモンバランスの調整も
手術後の体内における、腫瘍の再発防止のためのケアも
全てサザビーが長生きをしていくための「維持」に繋がる事なのです。

常に笑顔でいられるようにストレスを与えないこと
身体のマッサージを毎日行い、腫瘍や怪我があればいち早く見つけること
コートを出来る限り長く残せるように、毎日トリミングをすること

この3点が、いつまでもサザビーがサザビーであり続けられる
今回のテーマ、「維持」に深く関わるキーポイントです。

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長くて申し訳ないです・・・
けれどつたない文章ながら、ブログの閲覧回数がとても多くて驚くと共に、感謝です。
どの飼い主様も我が子の健康を願うのは当然のことですよね。
自分達の経験や培ってきた今までの体験は、あまり参考にならないかもしれないけれど
その差し迫った状況に向き合う時の、根本的な心情は皆さん、一緒なんだと思います。

その心情は「我が子を助けたい」「元気な姿にしてあげたい」「どうしたら良いのだろう」です。
自分達もそうでした。そしてその時に試行錯誤を繰り返して感じたことが、今回までの2つの記事になります。

先入観を持たないこと
ストレスを溜めないようにすること
あきらめないこと

偉そうですみません><
でも事実であって、これがいつも心にあることです。

では次回は最終回ですが、たぶん一番質問の多かった日々の体調管理についてや
老化に対する向き合い方、及び「コート」「歯」「視力」等に関してです。

ここまで読んでくれてありがとうございました。
コメントは大変だと思うので書かなくて良いですからね〜(・∀・)ノ



この記事へのコメント
兄さん、うんうんそうだよね
どれだけ愛情を持って
しっかり毎日の様子を見ているかだよね

言葉が話せないからこそ
私達が、しっかり心や体のサインを
読みとらないとね

小さな家族には、本当にたくさんの事を
教えてもらいました
これからも、ずっとずっ〜といっしょだよ
Posted by 華鈴ママ at 2014年09月16日 19:24
こんにちわ。

ホルモンの病気って、なかなか原因がつかめませんよね。
私の父が、甲状腺のホルモン異常でしたが、
原因を突き止めるまで、精神科まで行きましたよ〜!(笑)

でも、今はぴんぴんしてます!
Posted by アトムパパ at 2014年09月16日 22:46
(^^)/
Posted by SA at 2014年09月17日 07:01
良かったですね!
今写真を見ていると、そんな大変な事があったなんて信じられない位です。
ご近所のワンちゃんですが、ガンで余命を宣告されたそうです。
残りの犬生、好きに生きさせてやりたいと思ったそうです。
食欲も無くなっていましたが、だだ茶豆だけは口にしたので、好きなだけお食べって与えていたそうなんです。
そしたら何とガンが消えてしまって大学病院の獣医さんもビックリされたそうです。
だだ茶豆が良かったのか?
好きなものだけ食べて免疫力が上がったのかも知れません。
ストレスのない生活が体に奇跡を起こしたようです。
サザビーちゃんもきっとそうだったんでしょうね。
型通りの事だけがいいとは限りませんね。

Posted by ゆゆ at 2014年09月17日 19:12
私自身が甲状腺機能亢進症、いわゆるバセドウ病で病名がはっきりするまでに半年を要しました。
主治医にあと2週間遅ければ命はなかったと。
判断が難しいんですよね。
物言えぬサザビーちゃんは本当に苦しかったと思います。
今のサザビーちゃんがあるのはお兄さんの愛情の賜物ですね。
祈る思いで毎日ブログを見ていたのが嘘のように元気なサザビーちゃんの姿は本当にうれしいです。
お兄様もお身体大切にしてくださいね!



Posted by あきぴょん at 2014年09月18日 22:13
人間と違ってワンコの症例が少ない中、
この様な記事は多くの飼い主さんやワンちゃん達の
[治る!]手がかりになると思います。
ここまで詳しく書かれるお兄様の愛情を強く感じます!

私の老化のピークも[今]ならイイなー・・・
Posted by フッフールママ at 2014年09月24日 21:43
 
慈しみ育むこと その1慈しみ育むこと その3