2011年03月25日

渚にて・・・

渚にて・・・ 01

今回は特別編【渚にて・・・】をお送りいたします。
震災により、今月中の配送が伸びてしまったせめてものお詫びです。

そして、この度の東北地方太平洋沖地震により
甚大な被害に遭われた全ての皆さまへ
心よりお見舞いを申し上げます。


Blog Ranking
パピヨンランキング


On the Beach(渚にて)』を読み終えました・・・
具体的な詳細には触れないけれど、内容は非常に感慨深いものだった。

第三次世界大戦後の核爆弾による放射能汚染のストーリー。
人々は僅かな希望を求めて南へと移動していく・・・
けれど彼らを待っているのは、
派手な演出はないものの、じわじわと忍び寄る不安と恐怖。
何気ない日常が崩されていく・・・

不安が少しずつ近づいて大きくなり、それに気がついた時には絶望に変わる。

ああ・・・何かそう言うのって、
今の自分の病気に置き換えられる気がして、


憂 鬱 に な っ た ・ ・ ・




はるか昔に『オーメン』で知られるグレゴリーペック氏が主演した同名の映画もあったそう。
最近はオーストラリアとアメリカとの合作で『エンド・オブ・ザ・ワールド』が公開されたらしい・・・

混乱と恐怖に怯えた人々が四方に逃げまどい、
そして都市は次第にゴーストタウンに近づいていく。
誰もが愛する人を守りたくて、そして自分も守ろうと未来を模索する・・・
だからこそ必死になって生き延びようと、放射能から逃げるのでしょう。


渚にて・・・ 02

愛する者・・・
既に娘を失っている私には、
代わりとなる子供たちがいる・・・


ラ ラ と サ ザ ビ ー


私はこの子達を守らなくてはならない。
それが残り少ない私の人生で、出来ることなのでしょう・・・

それは普通の人間の家族を守るよりも、もっと大変なことのはず。
彼女達は避難場所や疎開地まで、きっと運んでもらえないはず・・・
こんな状況下であればペットと見なされた娘たちは、多くの場所で拒絶されるのです。

周囲は少しずつ放射能に汚染されていきます。
資源も物資も底をつく中、人々は宛てもない旅を始めることでしょう。
そして逃げることも、
諦めることも許されない私は・・・

静かに、静かに、
その地で暮らしていくことになるのだと思います。

荒れ果てた街の中で、私は何処へも移動できずに、
諦めきれない二人の為に、残った余生を送ります。
それでも病魔の進行が早ければ、私は身内にこう言うでしょう・・・


私の代わりに、二人を連れて逃げて


自分の持ち物、全てを渡して、
彼女たちを強く強く抱きしめて、
車の僅かなスペースに入れてもらった娘たちにこう言うの・・・


一緒に生きたいけれど・・・
ママは、そろそろ電池切れみたい
だから、ここから先は二人で仲良く頑張って・・・


ご め ん ね


僅かばかりの水と食料を持たせて、
私は二人を乗せた車を静かに見送ります・・・
それぞれが生き延びる術は、もうこうすることしか残されていないように思えました。
病魔に侵されている私は、娘たちを守ってやれない・・・
それどころか身内も私と一緒にいたら、余計な世話を焼かせてしまうことでしょう。
だとしたら、さっさと私が家族から離れることが一番なのです。

ほんのちょっと別れが早くなっただけ、
いずれ私はこの地から消えてしまう運命にある。
だから国から渡された薬を飲んで、その時間を全うしよう・・・

た っ た 独 り で ・ ・ ・


渚にて・・・ 03

荒廃した大地をとぼとぼと歩いて、私はある地域を目指して歩いて行きます。
その場所は自分に幸せと絶望を教えてくれたところ。
最後の最後に行けるとすれば、やはりその地を選ぶことでしょう・・・

大きな車道のコンクリートのひび割れた隙間から雑草が顔を覗かせます。
空を見上げれば、どんよりとした雲の隙間から、僅かばかりの陽が射していました。
そこはいつもならびっことのお散歩で、車を軽快に走らせていた道路です。
嬉しそうに窓の外を眺めるあの子の瞳には、キラキラと青い空や海が映っていたことでしょう・・・


ああ・・・その瞬間の積み重ねが、

いかに大切で幸せな時間だったか、、



在りし日の幸せそうな自分たちの姿が、
モノクロームの映像となって、脳裏に思い起こされます。

鉄のような匂いのする風が吹いていました・・・
静かに振り返ると、遠くに見えるビル群のシルエットの中から黒煙が上っています。
あの煙を消化する人間は、もうここには居ないのかもしれません。

点灯しなくなった信号機、乗り捨てられて荒らされた車、周囲に散乱しているゴミ屑、
綺麗に舗装されていた湾岸沿いの車道は、その面影を失くし荒れ果てていました・・・

破壊されて横倒しになった自販機、
シャッターがこじ開けられた店舗、
壁に落書きをされている派出所、
窓ガラスの割れた病院や集合施設、

全てが機能しなくなっていく・・・
崩壊する人類の滅亡を、こんな形で眺めるとは、想像もしなかった。

でも、今はこれが現実・・・




渚にて・・・ 04

どのくらい歩いたでしょう・・・
運動不足だった足に痛みを感じました。

もう少しだからさ・・・
言うこと聞いてよ?


自らを励ましながら、歩き続けます。
少しずつ、少しずつ、歩き続けます。



ザ、、ザァ、、、



微かな波音が聞こえました・・・
私はそれを確信すると、ホッとして、
僅かばかりのペットボトルに入った水を飲み干しました。

いつしか地面はコンクリートから土に変わり、砂浜に変わっていきました。
その足元の変化は、まるで地球上の歴史を遡っているようにも感じます・・・

そうだ、昔は地面と言ったら全部砂だったんだよね・・・


すっと顔を前方に向けると、そこには大きな水平線が広がっていました。





ザ・・ザアー・・・ン




大きな波音は太鼓の昔からそうであったの如く、
疲れ切った私の耳に繰り返し鳴り響きます・・・

辿り着いた場所は海・・・
狂ったように泣き叫んだ『あの日』と、
幸せな笑い声に包まれた『あの日』が、入り混じった海。

こんな状態になっても、ここに来るなんて・・・
私はなんて海が好きなのだろう。

行く場所が無くなって、
逝く場所に選んだ地は、
あれほど忌み嫌っていた海岸だった・・・

波音が心地よかった。
こんな現実が嘘のように、海はいつもと同じように輝いていた。

コン、コン・・、コン・・・

咳が出る。
数日前から、私も咳が出始めた・・・
いずれその咳に血が混じるはずだ。

それでも、薬を飲むのはもう少し後にしよう。
僅かに残された大切な時間を、自らの手で削ってしまうのは、
あまりにも、もったいな気がしたのだ。


渚にて・・・ 05

波打ち際に腰を下ろして、私は南方を見つめた・・・
北方から流れる汚染された大気は、徐々に南へと風に流されて、
既に地球の半分以上を包み込んで、人類を滅亡へと追いやり始めている・・・
核による放射能汚染なんて、自業自得なのかもしれない。
だから人類はイエス様を恨むことなんて、出来やしない。
与えられた緑のある青い地球を、こんな風に変えてしまったのは、自分達なのだから・・・

一部の狂った指導者のせいで、巻き添えはご免だけれど、
その指導者だって、選んだのは巻き添えを食らった多くの人々だったはず・・・
こんな風に持って行きようのない怒りは、諦めることによって、次第に消えていった。

だってもう時間がない・・・
怒っても泣き喚いても、決して元には戻らないし、
この状況を好転させて解決できるわけでもないのだから。

ポケットから潰れたスーパーの倉庫から盗んだ煙草を取り出した。
中々着火しないライターで火を点ける・・・
大きく息を吸い込んで、それと同時に起きる胸の痛みを堪えて、
空に向かって煙を吐き出した・・・




おいし・・・




陽が少しずつ傾きかけていました。
ここから見える夕焼けはいつも美しくて、
眺める度に『あの子』に見せたかったって、何度も何度も思ったの・・・

でも・・・
代わりにびっこが笑ってくれたから、
きっとこの気持ち、あなたにも届いたよね。


波音が心地よくって、私は少し砂浜の上で横になったの・・・
凄く気持ちよくって、病気のことなんて忘れちゃった。
もうやるべきことはやって、あらゆる責任感から解放されたせいなのかもしれません。


ひょっとしたら、もう立つこともないぐらい、今の私には使命がない・・・(笑)。


渚にて・・・ 06

薄暗くなった上空には星がちらほらと光りはじめます。
私は両手を上にあげて空に向かって、指を動かしました・・・


ああ・・・
そうだった・・・

まだ・・・私、やりたいことあったんだ・・・



今はこの地に独りぼっち・・・
これは昔の自分に戻れたということ。
オルガンばかり弾いていた若い頃の自分に戻ったの。


わたし・・・

もう一度、オルガンが弾きたい



それが自分の存在意義だった。
自分の存在価値は音楽を演奏してこそ、だった。
どんな形であれ、今は誰に気兼ねすることなく、独りになったのだから、
思う存分、自分の気持ちを鍵盤に叩きつけたかった・・・

それこそが自らの人生の終焉に相応しい気がしたの



音は聴こえないけれど、私の指は鍵盤に触れていました。
その指は何かに縋るように、そして紡ぐように、
汚染された大気の中を自在に踊り続けました・・・



も し 、 音 が 聴 こ え た ら ・ ・ ・



恐らくそこには何もないはずの、見果てぬ夢へ向かって、
私は必死で指を動かし続けました・・・

時折、幻聴のように、オルガンの音が鳴り響きます・・・




ザ ザ ア ・ ・ ・


幻聴は次第に激しくなって、繰り返す波音の間に、びっこの鳴き声が入り混じったの。

動かし続けた指を、ふと止めて・・・笑った。
ついに耳もおかしくなったって・・・笑った。


ザ、ザ、ザ・・・


壊れた耳には砂浜を歩く音が響いてきた・・・


これは・・・

幻聴じゃない?



何かの気配を感じた私は、上半身を起こして辺りを見回します。
私の視線の先には、薄暗くなった砂浜の上にボゥーっと浮かび上がる影が・・・


う、うそ・・・

な、なんで、ここに・・・?


赤い夕暮れの向こうから、近づいてくるシルエットは、
次第に見覚えのある愛しい姿を模って・・・




私 の 胸 に 飛 び 込 ん で き た の で す !




渚にて・・・ 07


これは夢、
それとも幻覚・・・?
私は両手で彼女をギュッと抱きしめて、頬ずりをします。


戻ってきちゃダメでしょ・・・

戻ってきちゃダメなのに・・・



耳元でそう囁きながらも、心の中には大きな安堵感が広がっていました。
無事を確認できた喜びと、再会することが出来た感動・・・



か、勝手に戻ってきちゃったら、

ママ、逝けないでしょ・・・




小声で呟きながら、私は用意していた薬をポケットから手にとって見つめました。
白いカプセルは掌でコロコロと転がります・・・

『・・・?』

娘は覗き込むようにして、その錠剤を見つめました。
溜息を洩らした私は、それを力強く握りしめて・・・

思い切り海に向かって放り投げました。



最後まで一緒にいることが守ることなのかもしれない
けれど、それは違うのかもしれない
答えはでなかったけれど、いまはこの時間を大切にしたいって思ったの・・・




ザ、ザ、ザアー・・・ン、、




大丈夫だよ、
ベッドが砂浜になっただけ・・・
それも素敵な波音を聴きながら横になれるなんて。
そして、傍らには愛しい娘たちが居てくれる。

私にとって、こんな幸せな時間はない・・・



夢から覚めたら、
またいつもの日常が待っている・・
そう、これは悪い夢でしょう?
どうせ、悪い夢に決まってる!

だから、ちょっとだけ・・・
ちょっとだけ、ママと一緒に横になって寝ましょう。







お や す み 、 ラ ラ
 
お や す み 、 サ ザ ビ ー








渚にて・・・ 08

月明かりに照らされて、海水が宝石のようにキラキラと光ります。
放り投げられたカプセルが波打ち際に転がっていました。




(この物語は『渚にて』の読後に書かれたフィクションです〜【あなたに届くまで・・・】より)


Blog Ranking
パピヨンランキング
この記事へのコメント
渚にて・・・

この言葉には

たくさんの想いいれがあります・・・
Posted by SA at 2011年03月25日 22:31
あな届?それともネビルシュートの方?映画の方はエンドオブ〜なら見たけど…
ちょっと期待、、、
それにしても写真綺麗ですね
Posted by ケイコ at 2011年03月25日 23:34
本当だぁ!いいですね。

千葉のライフラインは、その後どうかな?

ここにくると、へこんだ時も元気をもらえます。
いつもありまとう(^-^)
Posted by 華と鈴のママ at 2011年03月26日 10:13
はじめまして

長年 読み逃げ読者でした。ごめんなさい
今回始めてコメント致します。

「渚にて…」 モノクロ画像…とても美しいけど

背筋が凍りました。鳥肌が…

あの映画を知っていると、身につまされます。
日本はどこで間違ったんだろう?

千葉もかなりの被害だったようですね。
早く落ち着いて欲しいです。

Posted by ポンチ目 at 2011年03月28日 14:24
ポンチ目san、さすがですね、私も長年読者でしたが、このタイトルを見た瞬間、同じく背筋が凍りつきました。羊Yさんは何をここに綴るつもりなのでしょう…もしそれがアヤさんの文章であるならば、すぐにでも読みたいです。

1日も早く地震&原発漏れが収束しますように
Posted by toru at 2011年03月28日 15:07
凄く非常に問題提起ですね…どこで間違えちゃったんでしょうね…AYAさんなら受け止めちゃうんですね…みんなそれぞれ立場は違えど同じ人間で同じようにかけがえのない大切な家族がいます…だからこそこんな世の中になったら悲しい…いや、こうなっちゃだめです…一日も早く原発の問題を解決して欲しい…AYAさんありがとう。
Posted by kiccho at 2011年03月29日 22:30
いつも読み逃げしています。
写真の意味がようやく分かりました。
vivimamaさんのブログも読んできましたが、本当にこんな世の中に誰がしたんだーって怒りの気持ちで一杯です。
原発には助けてもらってはいるでしょう、この資源の少ない日本では、そういったエネルギーも必要なのでしょう。
けれど滅亡してしまっては元も子もないわけで、それこそ武田先生のおっしゃられる安全な原発をもっと、今以上に推進してほしいのです。
Posted by mai at 2011年03月29日 22:37
Ayaさん…
胸が締め付けられました。
読めてよかった…

ありまとう
Posted by Ash★Megu at 2011年03月30日 01:17
胸が締め付けられて‥
でも読めてよかったです

AYAさんの強さと弱さを感じました
同じなんだと安心した気もします
Posted by 白ネコ at 2011年03月30日 02:10
最初はとっても怖かった・・・
放射能って目にみえないし、子供も孫もあの子達も!
守るものがたくさんあるから
でも、今は生きてるし・・・
一緒に笑っていたいなって思うんだ
だから、明日もお散歩行って皆の嬉しそうな顔をみたいし
ボール投げして、えへへって笑ってる顔もみたいんだ!
この瞬間の幸せを大切にする。
今、自分に何ができるのか?自分にできる事って何なのか?
って考えながら・・・
Posted by ビッケ at 2011年03月30日 03:11
何か、今の状況を暗示しているようで怖いというかすごいというか・・・・。
Posted by Joy-stone at 2011年03月30日 08:43
 
ちょいとgdgd枠計画停電・・・くるかも?