2010年03月20日

短期集中連載・40(中篇)

短期集中連載・40(中篇)

ついにファイナルですね・・・・・
今回はこちらに普通に読めるように上げておきます。
クリックして読んでください★☆★
なお39は手が空いたら、あちらに更新しておきますので読み逃した方はどうぞ★

短期集中連載・40(中篇)

いちお(中篇)はここまで、です。
後編については今後まとめるかどうか思案中です。
(商品の完全版が発売になってしまうので・・・・・)


短期集中連載・40(中篇)

ちゅうことで長い間、読んでくれて本当に有難う御座いました。
商品版【あなたに届くまで・・・】はGW後に配送いたします。
こちらも待たせてしまってすみませんでしたm( __ __ )m

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アンドロマクセは従順だった・・・
物覚えが良くて、何でも言う通りに従ってくれました。
例え、間違って私が注意をしても、

『エヘヘ☆☆☆』

って舌を出して笑うんです。
犬って皆こんな感じなのかなって勘違いするほど、
彼女は初めて犬を飼う私の前で、明るく従順に振舞ってくれたの・・・



あ の 子 の よ う に ・ ・ ・






病院の診察室で先生が言いました。

先生『Aさん、何か良いことでもあった?』

向かい合うテーブルの反対側で、私は静かに頷きました。
そんな風に何も考えず、先生の質問に自然に答えられたのは、
凄く久し振りのことだったの・・・
そんな私の姿を見た彼女は、口元に笑みを浮かべます。

先生『ひょっとして・・・ワンちゃんがお家に来たとか?』

私は彼女の瞳を見つめ返すと、再びゆっくりと頷きました。

先生『確かパピヨンだったわね、名前は?何て呼んでいるの?』

私『血統書のまま・・・アンドロマクセです』

一瞬、彼女は『えっ?』という表情になり小声で『アンドロ・・・』と呟きました。
そしてコーヒーを私に差し出しながら、こう言います。

先生『長い名前ね、愛称は付けないの?』

愛称・・・?
愛称か、考えたこともなかったかも・・・

ニックネームとでも言いましょうか。
新しい家族に迎えられたペットには大抵、ブリーダーさんが付けた血統書名とは違う名前が付けられます。

例えば『モモ』とか『チョコ』とか『ラッキー』とか、
それは呼びやすく親しみやすい愛称となるわけで・・・

愛称は・・・
先生の質問にふと考え込む私。

私『マクセ・・・かな』

彼女は『ふふ』っと軽く笑い、コーヒーを飲みました。

診察室の窓は少しだけ空いていて、時折涼しい風が吹いてきます。
まだ残暑の季節だというのに、ひと足早い秋の気配を感じさせるものでした。

先生『もうお散歩デビューはしたの?』

首を左右に振り小さく肩を竦める私。
彼女はそんな私の些細なボディランゲージを見逃さずにいたのでしょう・・・


先生『Aさん、凄くあなた変わったわ。ううん、変われたのかもしれないね』


そう、それは本当のこと・・・
彼女に言われなくても、自身で気が付いていた大きな変化。
もう何もやり直せるはずなんてないと感じた自分の人生に、
少しだけ希望が見えていたのかもしれません。

一筋の光が、見えていたのかもしれません






診察室を出て、部屋の奥の彼女に一礼をする私。
先生も軽くお辞儀をして、小さく手を振ってくれました。
扉を静かに閉めて、足早に廊下を歩きます。
そのままトイレに駆け込み、窓を開けて煙草に火を点けました。
精神面に変化が現れたとはいえ、こちらの方は相変わらずです。
子犬のいる部屋では出来るだけ吸わないようにしていただけに、
外では知らず知らずのうちに、その本数が多くなっていたのです。


ふ  ぅ  ・  ・  ・


ここは3階にあるトイレ、窓の下は病院の駐車場です。
下に広がる景色を眺めながら、私は心地よく煙を吐きました。

その時・・・


あのさ、ここも一応、禁煙なんだよね・・・


背後で女性の声がしました。
慌てて振り返ると、そこには白衣をきた女性がこちらを睨んでいました。


す、すいません(汗)


小声で呟いた私は、煙草の火を洗面所の水で消しました。
目の前にある大きな鏡が、彼女を映し出しています・・・


あなた患者さん、それとも面会の方?


私はくるっと振り向いて、彼女を見つめました。
年の功は私より若干、若いぐらいの感じで、背丈は170センチぐらいはあるでしょうか・・・
背筋をピンと伸ばして、足は少し開き気味のまま、腕組をしています。
痩せ形で黒いストレートの髪は横に束ねてあり、眼鏡をかけていました。
そのレンズの奥からは、鋭い視線が送られてきます。


げ・・・私、この人、苦手だ・・・


すぐにそう思ったの・・・
だって、性格がキツそうだし、
オマケに神経質そうだし、
その上、自信有り気な態度と口調、

そして何よりも、何よりも・・・



私 に 似 て た か ら ・ ・ ・



彼女は目を細めて私をジロジロと見ながら、指で眼鏡を少しだけ上に上げました。


やだ、何か本当に似てる・・・


もし自分を第三者として向き合うことが出来たなら、こんな感じなのかもしれません。
雰囲気と言い、仕草と言い、それはまさに自分のようでした・・・


そっと足を前に踏み出して、私は洗面所から離れます。
そして恐る恐る彼女の脇を通過して、トイレを出ようとした、その時です・・・


もう、ここで二度と吸わないでね・・・


大きな声ですれ違い様に彼女が言いました。

な、なによ?
人を常習者みたいに!?
確かに、何度かここで喫煙していたけれど、
初めて会った人にそんな風に言われたくないよ・・・


私の足はピタっと立ち止ったの・・・







『それで?どうしたのよ?』

受話器の向こうでKが言いました。
部屋のソファーに座って、膝を抱えながら答える私。

私『うん・・・まあ、普通に・・・(汗)』

K『普通に、何?』

口籠る私に彼女が返答を促します。
ケージの中のアンドロマクセがこちらを見つめていました。
後ろのベランダのカーテン越しに見える外の景色は、もう真っ暗です。

K『どうせ、また一発おっぱじめたんでしょ?』

幼馴染の直感でしょうか・・・
Kは私のことなら全てお見通しのようです。

私『だ、だって、つい・・・(汗)』

悪いのはいつだって私です。
カーっとなっちゃう気性だって、
ルールを守らないのだって、ぜ〜んぶ私が悪いんです・・・

解ってるんです、よく解っているのだけれど・・・

アンドロマクセがケージの隙間から前脚を差し出して、カーテンを突いて遊んでいます。
時々、横に開かれるカーテン越しの隙間から、暗闇が見え隠れしていました。







足の止まった私は、横にいる彼女を見つめます。
そして研修医の名札が視界に入った時、こう言ったんです・・・

私『私、患者です。患者は病院にとってお客さんでしょ?
  いくら規則に違反したからといっても、言い方ってモノがあるでしょ?
  それとも研修医さんだから、まだお客様に対するサービスとか習ってないのかしら?』


やってしまった・・・
自分が悪いのだから黙って大人しく出て行けば良かったのに・・・
よりにもよって、ルール違反の自分を正当化するような口調で、
ドクターに噛みついてしまった・・・

眼鏡の彼女は私を睨んでいました。
何も言わずに睨んだまま・・・

何か言い返してくると思っていたの。
きっと私よりもキツイ口調で、傷つく言葉を並べてくると思ったの。

だって・・・

だって・・・

私に似てたから、きっとそうするんだろうなって思って・・・



『ごめんなさいね、研修医だから解らなかったわ』



ポツリと彼女が言いました。
皮肉混じりではなく、本当に普通にそう答えたの・・・
彼女は私にくるっと背中を向けて、
トイレの個室に入って静かに扉を閉めたの・・・



ザ ア ー ・ ・ ・



すぐにトイレの水が流れる音が聞こえました。


何度も・・・

何度も・・・

彼女はトイレの水を流し続けたの・・・


まるで今の私の言葉をかき消すように・・・


凄く怒ってる・・・?

ううん、きっと傷つけたんだ・・・
彼女を、傷つけたんだ・・・

何 や っ て ん だ ろ う 、 私 っ て ・ ・ ・


ザ ア ー ・ ・ ・


繰り返し流される水の音は、そこに立ちつくす私に、
出て行け』と言っているようでした。

たった今、悪態を吐いたばかりなのに、もう居た堪れない気持ちになっている私。
それはきっと気持ちが不安定だからだ・・・
人の気持ちを全く考えずに、感情のままに相手を痛めつける。

先生・・・
私、思ったほど変われていないかもしれない。
ファビオやマリアと暮らした頃の自分と一緒なんだもん・・・


人は変われる?
それとも変われない?



何度も同じ過ちを繰り返して行くだけの人生じゃ、意味がないの・・・
自分から変わらなくちゃ、多くの傷ついた人達が報われない。

私のせいで傷ついた人達が・・・




頭の中に記憶が駆け抜けていきます。
ファビオに縋ったり、怒鳴り散らした自分、
マリアを何度も叩いたり、抱きしめたりした自分、
彼女を海岸で抱き上げて、狂ったように叫び泣いた自分、
猫の為に、仕事を辞める覚悟でいた親友の姿を見つめた自分、
空港で、見知らぬ少女の演奏に拍手を送った自分、

そういう一つ一つの軌跡が、何の為にあったのかって・・・
多くの人達の笑顔や悲しみは、何の為にそうなったのかって・・・


小さく・・・
そして次第に大きく・・・

息を吸って、
そして吐いて・・・


目 を 瞑 っ て 叫 ん だ の






ご め ん な さ い 、 も う 吸 わ な い か ら !






大きな声で、それだけを言うのがやっとだった。
同じ過ちを繰り返したままにしておく事が嫌だったから、
自分の悪態を否定して、彼女の気持ちを追いかけたの。

それでも彼女を傷つけたことは私の中からは、もう消えない・・・
売り言葉に買い言葉なんて良くあることだろうけど、
こんな感じで人を傷つけてはいけないんだって、解ってたはずなのに。

私 っ た ら 何 で こ う な ん だ ろ う ・ ・ ・





その時、トイレの水を流す音が止まったの




ひょっとして私の声が聞こえたのかもしれない・・・
それとも、注意された腹いせに言い返して傷つけたくせに、
突然、大声で謝って変な女と思われたのかもしれない。


でも・・・

でも、聞こえたよね、たぶん・・・

もし、そうなら彼女の気持ちに追いつけたのかもしれない。


だ っ て 彼 女 は 私 に 似 て い た か ら ・ ・ ・








K『それでトイレを出てきたの?相手は?』

私『会ってないよ、個室から出てこなかったし、私もすぐにトイレから出ちゃったし・・・』

電話の向こうのKが軽くため息を洩らしました。

K『あのさ、どう考えても悪いのはあなたでしょ?そういうの逆切れって言うんだよ、知ってる?』

一言も言い返せない私・・・
確かにその通りだった。
私がやったのは、本当にただの逆切れだった。

K『今度会ったら、ちゃんと謝っておきなさいよ。病院紹介したのだって私なんだから!』

私『・・・そのつもりだよ』

彼女の言葉に力なく返事をするのが精一杯でした。
その時は、ひたすら自己嫌悪に陥っていたから・・・

電話を切って、部屋の隅で蹲ったの。
きっと私は甘えてるんだ・・・
自分の犯した行動で自己嫌悪になっていたから、Kに話を聞いてもらって、
慰めてもらおうと思ったのかもしれない・・・


何やってるんだろう、私って・・・


足元にググがやってきました。
そっと抱き上げて、頬ずりをします・・・


ねえ、ググ・・・
私って変われたのかな・・・
ひょっとして全然変われていないかもしれないよね



こんなんじゃ駄目な気がする。
こんなんじゃまた同じことを繰り返しちゃう。
何れその矛先は、あなた達にまで及んでしまうかもしれない。


頑張らなきゃ・・・
自分を変えるために、頑張らなきゃ・・・



もっと自分でしっかりしなくちゃいけないって、言い聞かせていたの。
もう大人でしょ、この子たちのママなんでしょって・・・

その時、頭痛がして、また耳鳴りがしたの。
いつものだ』って判ったのだけれど、どうしようもなくって・・・
じっと目を瞑って、頭の痛みが消えるのを待っていたんです。



だ い じ ょ う ぶ 、 マ マ ・ ・ ・



すぐに幻聴だって思ったの。
だって、それはマリアの声だったから・・・
あの子の笑顔と声は、もう聞こえるはずがないのだから・・・




だ い じ ょ う ぶ 




薄らと瞼を開いて、意識をしっかりと持って、
その声のする方向を見つめたの・・・

そこにはケージの奥で、こちらを見ているアンドロマクセがいて


『  エ  ヘ  ヘ  』


って笑顔でこちらを見つめていました。


・ ・ ・ マ ク セ ?


犬は笑うわけなんてないんです・・・
たぶん笑顔に見えるだけなんです・・・
人間が勝手に解釈してるだけなんです・・・

でもね、でも・・・

そんな表情に癒されちゃうのは何でなんだろう・・・

まるで自分の本当の子供のように感じて、癒されちゃうのはなんでだろう・・・





愛 し い か ら で し ょ





ケージの扉をそっと開くと、アンドロマクセは私の下へトコトコと歩いてきます。

そして膝の近くでお座りをして・・・

ゆっくりと私を見上げて・・・

もう一度・・・



『  エ  ヘ  ヘ  』



って笑ってくれたの。


笑 っ て く れ た ん だ ・ ・ ・









いつか、私はその笑顔を守りたくて、

自分の生命もいらなくなるの・・・




そして何が一番大切なことかを学んだ時、

私は彼女をこう呼ぶの・・・




愛しのサザビーって・・・








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この記事へのコメント
読ませていただけるなんて嬉しいです。
いつも探すことができないので。。。
ありがとうございます。
Posted by ちゅーちゃん at 2010年03月19日 20:20
↑いえいえ、これで最後なので・・・・・
いつも探させて申し訳なかったです。
今回は後ほどアッサリ読めるようにしておきますね。
ここまで読んで頂きありがとうございました(・∀・)ノ
Posted by 羊Y at 2010年03月19日 20:24
完全版、到着を楽しみに待ってますね。
Posted by フッフールママ at 2010年03月20日 09:31
Ayaさんの煙草の私は煙草すわないけど他のとこでそういう性格がでる時があって、やっぱりそれじゃダメだよな>_<って思ってるんです…でもAyaさんはサザビーがいて変わっていったんですね…私も変わらないとな…
Posted by 雪花 at 2010年03月20日 19:51
Ayaさんの心の変化に、自分も温かい気持ちになります(*^^*)

何も変わってないなんてことはない、Ayaさんは本当に努力なさってます。

びっこちゃんの笑顔はAyaさんの気持ちを確実に癒してくれましたよね、もちろん自分もですが(*^∀^*)

Posted by まぃ at 2010年03月20日 21:37
愛しいです。

私もあんずさんが家族の一員になってから
かなり変わったと思います。
不思議な力の持ち主です。
Posted by あんずパパ at 2010年03月20日 22:13
到着楽しみに待っています…
が、お兄さん、ご無理なさらずに。。。
Posted by ひろ at 2010年03月20日 22:25
今 うちの子を抱きしめました。。。
Posted by つばさ at 2010年03月20日 22:36
研修医さんってひょっとしたら…?
憶測ですが、この続きが気になります
アンドロマクセちゃんがいつサザビーちゃんに命名されるのかも
後編も絶対読みたいです
Posted by kanamama at 2010年03月20日 22:42
愛しく思えるヒトがいるって幸せですよね
Posted by 白ネコ at 2010年03月20日 23:02
サザビーの笑顔はAyaさんだけでなく、たくさんの人達を癒してくれていると思います(*^^*)
そんなサザビーといつも一緒の兄様が羨ましいデス☆
Posted by ケンケン at 2010年03月21日 00:15
愛犬には、不思議な存在感があります
たくさんの事も教わりました
とても愛しい
なくてはならない家族です
Posted by 華と鈴のママ at 2010年03月21日 00:19
私もこの研修医さんが・・・・と思ってしまいました。

人の人生って、必ず帳尻が合うようになっていると聞いたことがありますが、aYAさんもそうだったんだなあと思います。いやなことや辛いことがあった分、うれしいことや癒されることが追いかけてきたんだろうなあって。時間の長さではなく密度の濃さが大事なんだと思います。
Posted by joy-stone at 2010年03月21日 07:42
私も研修医さんは…かな?って。
この後の展開、商品版でのんびりお待ちしています。(^.^)
Posted by のせ at 2010年03月21日 07:59
 
風が強くて・・・(汗成田行脚の旅